■入庫

入庫

入庫したときに車両の損傷状態をお客様と一緒に確認する。
何処から何処までがダメージを受けているのか?
何処まで修理するのか?
など、予算や納期についても打ち合わせをします。
今回は保険を使わずに自費で修理をするということなので修理代が高くならないように、左フロントドア及び、左ロッカーパネルを板金することにしました。

ダメージ・・・左フロントドアは表側と裏側(内張り側)までへこんでおり、ドアの真ん中に付いているモールの直ぐ下まで歪みがあります。
下に付いていたロアーモールはダメージを受けたときに割れて外れてしまい、付いていません。
ロッカーパネル(下の黒いパネル)はドアを開けたカバーのところまでへこんでいてラインまでへこんでしまってます。



■お見積もり

お見積もり

ダメージを判断してお見積もりを作成します。
脱着工賃、交換工賃、板金工賃、塗装工賃、部品代の合計を出します。

この車両で交換する部品は左フロントドアロアーモールだけです。左フロントステップカバーは変形していますが、自費のためドライアーで暖めて修正し、再利用します。
部品を交換しないで修理するのが安く仕上げるためのコツです。



■分解

分解
分解

ドアを板金するために、内張りを外します。
ネジを外してスイッチ類を外します。
内張りの周りはクリップで付いているので引っ張って外すのですが、ちょっとしたコツがあります。
指先に力と神経を集中させ腕全体を引くようにすると外れやすいです。力だけで外そうとすると内張りやクリップが壊れてしまうので気をつけましょう。
内張りを外すと、雨漏れしないようにビニールが貼ってあるので切らないようにゆっくりと剥がします。
ほとんどの車はブチルテープで止まっているのでビニール側にブチルテープが残るように剥がすと作業がしやすく、再利用できます。



■板金(ハンマリング)

板金(ハンマリング)
板金(ハンマリング)

ドアとロッカーパネル(ステップ)のラインが両方ともへこんで崩れてしまっています。
ドアのラインを真っ直ぐになるようにダメージの強かったところ(一番へこんでいるところ)をドアの内側からハンマーで叩きます。
直接ハンマーで叩くのではなく、木を当てて大きいハンマーで粗出しします。
裏から叩いて出っ張らない程度に粗出ししたら、モールの付くラインをタガネを使ってハンマーで叩きだします。
ラインが真っ直ぐになるようにドーリーという鉄のかたまりをドアパネル の反対側に当てて板金ハンマーで叩きます。
板金の基本は低いところを裏から押しながら高いところをハンマーで叩いて平らにして、形を作ります。形がつぶれて、どういう形かわからなくなってしまっている場合は反対側を見て同じ形に整えます。
形が整ったら細かいデコボコをならします。この時の力の入れ具合をコントロールして鉄板を伸ばさないように平らに仕上げます。
もし、鉄板を押してボコンボコンと鳴るようだと急所を叩いてボコンボコンと鳴らないようにします。
もし、急所を叩いも直らない場合は絞りといってボコンボコンする部分を加熱して水をかけ急激に冷やします。これは鉄板が弱くなってしまうので極力しないようにハンマリングで直すようにします。



■板金

板金
板金

次にステップパネルの板金をします。
ステップは裏から叩くことができないので表から溶接して引っ張り出します。そのために最初に塗装を剥がします。
パネルが柔らかい部分やラインまで影響のない場合はスタッド溶接機といって点付けの片面スポットができる機械があるのですが、この車両の場合は損傷が大きく、硬い部分でもありラインまでへこんでいるため、スタッド溶接機だけでは引っ張りきれないため、最初に半自動溶接機で鉄板をステップに溶接しスライディングハンマーで引っ張り出します。
一番ダメージがあるところを引っ張り出した後、ラインを作るように溶接して引っ張ります。
一回で出そうとするのではなく極端に高い部分を作らないように、均等な高さになるよう溶接する箇所をずらして、引っ張り出します。ラインが出て大きいへこみが取れれば、細かいへこみはスタッド溶接機を使い引っ張り出します。
溶接の痕はベルトサンダーなどで削り落とします。焦げた部分を残さないように、また高い部分はハンマーで叩いてからサンダーで削ります。



■足付け

足付け

叩き出しの次にパテ付けの作業に入ります。
高すぎる部分がないか手で触って確認しますが、汚れた手で鉄板を触らないようにします。
鉄板のむき出しになっている部分に水分や油分が残ったままパテを付けてしまうと、後にブリスターといって塗装にブツブツと膨らみが出てきてしまいます。
この膨らみを直すには水分か、もしくは油分の付着している段階まで剥がして塗装し直さないと治りません。そうならないために、この段階で注意します。
サンダーで削った塗膜の切れ目は鉄板になじんでいないためペーパーでなじませます。
この時鉄板の出ている部分もいっしょにダブルアクションという機械で足付けします。
この作業の後にシリコンオフで油分を取り除きます。



■パテ付け・パテ研ぎ

パテ付け・パテ研ぎ
パテ付け・パテ研ぎ

季節に合ったパテを使い、気温に応じて硬化剤の量を調節しますが、硬化剤の少なすぎは密着が悪く、巣穴もできやすいので注意します。巣穴とはパテの中に空気が入ってできる穴のことで目の粗いパテほどできやすいのです。
板金パテで歪みを完全に取り除き、ポリパテで巣穴を埋めるのが理想です。
最初に板金パテをしごくように付けます。特に塗膜の切れ目は押し込むように付けます。
次に必要な量を取り、巣穴ができないよう左右に往復するようにヘラで押さえつける要領でパテ付けします。
パテはどんなに暑い夏場でも一度は赤外線などで熱を加えておきます。化学変化によって固まらせているので痩せを防ぐために重要です。
パテに一度も熱を加えず塗装してから熱が加わると痩せといって塗膜に段差ができる場合があります。
これを防ぐために60度くらいまで熱を加えてあげます。
一工程ずつ赤外線などで熱してあげるのがベターです。

鉄板パテを研ぐときは最初に60番くらいの目の粗いペーパーを使います。
塗膜をなるべく研がないようにパテの付いている部分を塗膜と同じ高さにそろえるように端から端までを意識して研ぎます。これだけの面積がある場合は長いあて板を使って研ぐと平らにしやすいです。
だんだんと平らになってきたらペーパーを徐々に細かくしていきます。平らになって歪みが取れたら粗いペーパー目を残さないように320番程度のペーパーで全体を研ぎます。この作業はダブルアクションという機械を使うと楽にできます。

エアーブローして粉をよくとばしてポリパテを付けます。
ポリパテとは板金パテより目が細かくて柔らかいパテです。巣穴にパテを擦り込むように付けます。ここでも赤外線を使って熱を加えておきます。
ポリパテを研ぐときは水研ぎで歪みを目と手触りと両方で確認しながら研いで仕上げるのが良いです。



■機械工具

機械工具

ここまでの作業に使った機械工具です。
上の左にある機械がスタッド溶接機、その右の黄色い機械が半自動溶接機。スタッド溶接機の前の横になっているのがスライディングハンマー、手前の一番左からダブルアクション、ディスクサンダー、ベルトサンダー、ドーリー、たがね、ハンマー各種、クランプ、エアソー、バイスプライヤーです。
どれも板金には欠かせないアイテムです。



■サフェーサー

サフェーサー
サフェーサー
サフェーサー

パテの研ぎが良ければ塗装する範囲の足付けをします。
サフェーサーの入れる部分は800番のペーパーで研いでおき、クリアーを塗る部分まではスコッチブライトというペーパー代わりのような物とウォッシュコンパウンドを使い塗膜に傷を付けて塗料がくいつき易いようにします。この時深い傷が入らないように注意します。
サフェーサーを入れる前に水研ぎをしているので赤外線で暖めて水分を取ります。エアーブローだけではパテの吸った水分は蒸発しにくいため一度暖めておけば完璧です。

マスキングしてサフェーサーを入れるのですがマスキングを剥がしたときにサフェーサーの厚みで段のできないようにぼかすようにサフェーサーを吹きます。段を付けてしまうと研ぐのが難しくなってしまいパテを研ぐより苦労します。

この車両はドアの内側もダメージを受けていたのでサフェーサーを吹きます。サフェーサーも硬化剤を使う2液タイプを使ったほうが塗装に影響が出ません。1液タイプ、2液タイプ、どちらも短所長所がありますが、仕上がりを考えると2液タイプのほうが良いです。

サフェーサーを入れたら一度暖めて十分に乾燥させます。乾燥したら、巣穴やペーパー目がないかチェックし、最後の拾いパテという1液のパテをしごいて塗ります。このパテを付けなくてもいいようにサフェーサーを吹く前の段階でしっかりとチェックをするのが大事です。
サフェーサーを研ぐとき拾いパテは残さないつもりで厚塗りはしないようにします。
サフェーサーを研ぐのは800番から1000番を使ってひっかき傷の付かないように水研ぎで行います。

塗装する前の日までにシーリングの割れている部分や剥がれた部分をシーリングし直します。
シーラーが乾いていないのに塗装すると、後に塗装が浮いてきて剥がれる可能性があるので注意します。



■塗装

塗装
塗装

マスキングをする前に車両の色番号を確認し必要量のボディ色を作ります。これは塗料メーカーからデータが配られていて、それを参考に何種類かの塗料を混ぜて色を作ります。
この作業を調色というのですが日向と日陰両方で確認しておきます。どの色にも特徴があり調色には経験が必要です。

サフェーサーの研ぎが終わると、シリコンオフで塗装する面を全部拭くのですがマスキングをする前に一度拭き取り、マスキングが終わったところで2枚のウエスで拭き取ります。この作業は塗装面の油分を除去するために行うので片方の手にシリコンオフの付いたウエスを持ち塗装面を拭き、直ぐに反対の手に持った綺麗な何も付いてないウエスで拭き取ります。これは油分を一回浮き出させ、それを吸い取ると考えてください。その次に静電気除去用のウェットウエスで拭き取ります。

塗装する直前にエアーブローしながらタッククロスというベトベトしたウエスで塗装面の綿ゴミを取ります。

最初に調色した色をガンで吹きます。この車両はシルバー系メタリックなのでムラにならないよう、気をつけます。何回も続けて塗らずに一回塗るごとに時間を空けます。シンナー分を蒸発させ色が決まっていることを確認した後にクリアーを吹きます。
色(ベース)のシンナー分が蒸発する前にクリアーを塗ってしまうと後で艶引けの原因になります。
また時間を空けすぎてもクリアーの密着が悪くなるのでマスキングに飛んでいる部分を触ってみて乾燥具合を確認してからクリアーを吹きます。

クリアーも色(ベース)と同じで一回塗ったら時間を空けます。
一回目から艶を出すように肌を確認しながらクリアーを塗り、2回目で仕上げます。仕上げの後に熱で暖めて乾燥させます。

この車両はステップの下の部分に黒いアンダーコートが塗ってあるので、塗装した部分の磨きが終わった後にマスキングをしてアンダーコートを吹きます。アンダーコートの色が最初の色と同じで合えば艶消しのクリアーを、色が違えば調色して吹きます。
乾燥させて塗装工程は終了です。



■組み付け

組み付け

外した部品を全部確認して、外した順番と逆の順番で部品を取り付けていきます。
各部品には付く場所や順番が決まっているので、外すときに頭を使って覚えながら外します。また、汚れている部品やボディーは取り付ける前に綺麗にしておき、それから取り付けます。
組み付けが終了したら直ぐライト関係やスイッチ類、開閉状態を確認します。



■納車準備

納車準備

納車準備とは簡単に言えば洗車です。
ただ、板金塗装という仕事は、お預かりした車をまったく汚さずに作業することは
不可能な仕事なのです。
ですから、作業した部分だけではなく全体を綺麗に確認する意味で洗車します。
ただ、作業の工程で汚さないように工夫しながら作業するのが職人だと思います

以上で板金塗装作業工程の解説は終わりです。
大体おおざっぱに解説してしまいましたが、まだまだ気をつけたり気を使ってしなければならない作業があります。
この業界は、専門用語が多々あり、なるべく車について知らない方にもわかるように解説したつもりですがわかりにくい部分もあると思います。わからないことがあったり、板金塗装に興味を持ち、もっともっと知りたい方はお問い合わせをいただければお答えします。



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